1.麦粒腫(ばくりゅうしゅ)
俗に、「ものもらい」「めばちこ」「めいぼ」などといわれるもので、まぶたの一部が、麦の形に腫れるところから、「麦粒腫」という病名がつきました。この病気は、まつげのそばの脂腺や汗腺、またはまぶたの中の瞼板腺(マイボーム腺)に細菌が感染し、まぶたの一部が赤く腫れてずきずきと痛み、化膿する病気です。
脂腺や汗腺にできたものを「外麦粒腫」、瞼板腺にできたものを「内麦粒腫」といいます。自然に治ることもありますが、こすったり、押したりすると、炎症が周囲へ広がり、治りがおくれるので、いじらないことが大切です。抗生物質を内服すると、化膿しないで治ることもありますが、化膿した場合には、切開して膿を出すと早く治ります。まぶたの広い範囲に病変がおよんだものを眼瞼蜂窩織炎といい、これが化膿して膿が溜まったものを眼瞼膿瘍といいます。
麦粒腫は、一度できると、度々できることもあります。この原因には、不潔な生活環境や慢性の結膜炎、偏食による栄養障害や糖尿病などがあり、とくに繰り返しできる場合には、原因を確かめ、根本的に治療することが必要です。
2.霰粒腫(さんりゅうしゅ)
霰粒腫の霰はあられのことで、結膜にあられの粒のような小さなしこりができるので、「霰粒腫」という病名がつきました。この病気は、まぶたの中の瞼板腺(マイボーム腺)の排出管がつまって粥状の分泌物が溜まり、周囲に慢性の炎症を起こす病気です。
通常、赤くなったり痛んだりしませんが、炎性霰粒腫といって、急に炎症をおこし、赤く腫れて痛むこともあります。まぶたをさわると、ぐりぐりしたものに触れますが、このぐりぐりは自然に吸収されることもありますが、普通は数ヶ月の間に少しずつ大きくなります。ぐりぐりが大きくなった場合には、まぶたの裏側から切開し霰粒腫を包んでいる袋ごと摘出します。 老人にこのようなものができた場合には、よく似た病気で、まれに癌であることもあり、注意が必要です。
3.眼瞼縁炎(がんけんえんえん)
この病気は、まぶたの縁が炎症をおこしたもので、痒みを伴います。まつげの根本に細菌が入り膿疱をつくる「毛瘡性」(もうそうせい)と、まぶたの皮脂腺の分泌が多すぎて、ぬかのような小さなかさぶたができる「脂漏性」(しろうせい)とがあります。
毛瘡性のものは、抗生物質の点眼薬や軟膏を使用します。脂漏性のものでは、まずまぶたに付着した分泌物やかさぶたを、お湯で湿らせたガー ゼなどできれいに除去します。その後はよく洗顔し、まぶたを清潔に保つことが大切です。
この他化粧品による単純なかぶれや、目薬によるかぶれもみられます。目薬を何滴もさす人がいますが、目からあふれ出た目薬によってかぶれることがあるので、目薬は1滴だけさし、あふれ出た場合やさし間違えてしまった場合には、すぐにふき取るようにしましょう。目薬をさしてから、まぶたが荒れたりただれたりした場合には、目薬が合わない場合もあるので、眼科医に相談して下さい。
4.眼瞼下垂(がんけんかすい)
この病気は、上まぶた(上眼瞼)が垂れ下がって瞳孔をおおって目がよく開かない状態のことをいい、先天的なものと後天的におこるものとがあります。
* 先天性眼瞼下垂
眼瞼を上げる筋肉を眼瞼挙筋といいますが、この筋肉の発達が不十分だったり筋肉を動かす神経(動眼神経)が十分に働かないためにおこります。片眼だけにおこることが多く、瞳孔が眼瞼で完全に隠れて目をつぶったのと同じ状態のときは、視機能の発達がおかされて、弱視になる危険があります。なるべく早い時期に手術をしなければなりません。
まぶたの間から瞳孔が見えれば、視力には影響がなく、見かけの改善が目的の手術になるので、幼稚園や小学校に上がってからでもかまいません。手術は、まぶたを引き上げる筋肉を短くしたり、糸や筋膜や皮膚片などを利用して、まぶたをひたいと連結させてつり上げたりします。手術後、再び下垂して再手術が必要になることもあります。
* 後天性眼瞼下垂
後天性眼瞼下垂の多くは、脳出血などの脳血管の障害や腫瘍、けがなどが原因で、まぶたを引き上げる動眼神経が麻痺することによりおこります。たいていの場合、脳神経外科の診察も必要で、原因となった病気の治療を行って半年か1年たっても回復しない場合には、先天性眼瞼下垂と同じ手術をします。
後天性の中には、老人になって眼瞼を開ける眼瞼挙筋の力が弱くなっておこる、老人性眼瞼下垂があります。この場合、日常不自由ならば、筋肉を縫い縮める手術を行うと治ります。
5.眼瞼内反(がんけんないはん)
この病気は、まぶた(眼瞼)が内側に彎曲しているもので、まぶたの縁やまつげが眼球に触れ、刺激となって涙がでたり、ごろごろしたりします。けがの後のひきつれでおこる瘢痕性内反、まぶたの筋肉がけいれんしておこる痙攣性内反、老人になってまぶたの皮膚や筋肉がゆるんでおこる老人性内反などがあります。瘢痕性や老人性のものは手術をします。痙攣性のものは、痙攣の原因である結膜や角膜の病気の治療をし、痙攣を抑えるために麻酔薬を使用したり、神経を遮断する薬を使用したりすることもあります。
6.睫毛内反(しょうもうないはん)
この病気は、まつげが眼球のほうをむいているために結膜や角膜に触れてうっとうしく、角膜に小さな傷をつくることがあります。この結果、目をこする、まばたきが多い、涙っぽい、結膜が充血しやすい、めやにが出やすい、などの症状がおこります。大部分は生まれつきのもので、乳児全体の半数近くにみられますが、年齢が上がると共に自然に治り、小学生では5%位に減ります。角膜をあまり傷つけない、程度の軽い場合には自然に良くなることが多く、経過をみるようにします。角膜をひどく傷つける場合には、角膜が白く濁って視力が低下したり、他の角膜疾患を誘発することもあるので、幼児期に手術をして、まつげの方向を正しくします。但し、まつげの方向がもとに戻りやすく、再手術が必要になることもあります。さかさまつげを勝手に切ったり、抜いたりすると、先のとがったまつげが生えてきて、かえって角膜を傷つけることになるので、必ず眼科医に診てもらいましょう。
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